月夜の翡翠と貴方



「……ミラゼ、とりあえず歩こう」


道ゆく人々が、迷惑そうにこちらを見ている。

ルトがそう言うと、女と共に歩き出した。


...ミラゼ。

そう呼ばれた彼女は、ふふ、と美しく微笑んだ。

ルトの友人だろう。

この人混みのなかで会えたなんて、すごい偶然だ。

だが、先程の状況で登場してくれたことがありがたい。

助かった、というか…

ほっとしていると、ミラゼがようやく私の存在に気がついた。

いつのまにか、私と手を繋いでいないほうのルトの腕と、自身の腕を絡めている。

「あら。この可愛いコちゃん、どうしたの?」

まさか、とミラゼがルトを見る。

違う、とルトが苦笑いしながら答えると、ミラゼはふふ、と再び意味深な笑みを浮かべた。


「ちょっと、用があってこの前から一緒にいるんだよ」

「ふぅん」


こちらを見ると、にっこりと笑う。

とても綺麗な笑みだが、どこか不自然なそれに、私は薄気味悪さを感じた。