月夜の翡翠と貴方



...ああ、どうしようか。


ルトの手と、背中を頼りについていく。

私には、それしかできない。

それしか、してはいけない。

この手を握り返しては、いけない。

握り返すことなんて、できない。


先程の店のことを思い出す。

ルトは店の女に、親しげに『久しぶり』と言っていた。

...私は、できない。

握り返せない。

ルトのことをなんにも知らない、ただの奴隷の私には。





「酒場?」


宿をとって街をふらふらしていると、いつの間にか夕方になった。

宿に戻るのかと思いきや、ルトは酒場にいくと言い出した。


「そ。知り合いがやってるとこなんだよ。どーせこの街に数日いることになりそうだし、ちょっと覗いていきたくてさ」

「...そう、なんだ」