月夜の翡翠と貴方



そう言うと、ルトはこちらに手を差し出してきた。


「ん」


何かを待つように、こちらを見てくる。

「………?」

私が首を傾げると、ルトは呆れたような顔をした。

そしてこちらに手をのばすと、私の左手と、自分の右手を繋ぐ。


「またはぐれられたら困るからな。手繋いだ方がいいだろ。わかれよー」


そう言って、そのまま大通りへと人波をかき分けて割り込んだ。


...そういう、ことか。

そう思いながら、ルトの背中から目を離さないよう顔を上げ、ぶつかる人々の肩ごしに彼を見た。


「………………」


...別に、こうやって手を繋ぐのは、初めてのことではない。

それなのに、何故こんなに繋がる手の温かみが、気になるのだろうか。

初めて手を繋いだときは、こんなこと気にならなかった。

ただただルトのすることひとつひとつに、驚いていた気がする。

一際人の流れが激しいところでは、ルトはより強く私の手を握った。

...離れない、ように。


「……………………」


ちらりと下を向き、その繋がる手と手を見つめる。

...嫌だな、と思った。

今はルトのすることひとつひとつに驚くと同時に、違う感情が浮かんでくる。

一瞬にして消え去るものだけれど、私はその感情を嫌だと思った。

はぁ、とひとつため息をつく。