月夜の翡翠と貴方



ロゼの叫び声は、止まらない。

スジュナは私の腕の中で、静かに涙をこぼす。

ルトが息を呑み、声を出そうとしているのが、聞こえた。


「兄さん!早くこんな子、奴隷屋に売り戻して……」


「ロゼ!!」



…聞き覚えのある、女の声だった。

スジュナも目を開き、私の肩から顔を覗かせ、役者勢を見つめる。

私も顔を上げると、スジュナを抱きしめていた腕の力を緩めた後、振り返った。


「クラン姉さん…………?」


ロゼの呟きとともに、彼女の視線の先の女に、視線が集まる。

その女の姿に、私は目を見開いた。

...輝く銀髪と、聞いたことのある、よく通る声。

叫んだのは、パン屋で会った女性だった。

髪を結んでいたから、気づかなかったのかもしれない。

パン屋で会ったときのことを思い出し、こんな形で再会してしまったことを申し訳なく感じた。

クランと呼ばれた彼女は、悲痛そうに顔を歪めている。

「姉さん…………?」

クランは唇を噛み、俯いたまま、細い声を出した。