月夜の翡翠と貴方



そこで、後ろから足音が聞こえた。


「やっと見つけたー」


振り返ると、はぁ、とため息をつくルトの姿が見えた。

「…あ、おかえり」

「...おかえりじゃねえよ。公園にいろって言ったのに、いないし。その辺探し回ったっつの」

「あ…ごめん」

時計を見ると、約束の一時間はとっくに過ぎている。

つい、スジュナの話を聞くのに夢中になってしまったようだ。


「会えたから、いいけど」


ふぅ、と息をつくと、ルトは店内を見回した。

「おにーちゃん、おにーちゃん!」

スジュナが、ルトの足元で呼びかける。

「ん?」

「あのねぇ!あの服、おねえちゃんにとっても似合うと思うの!」

スジュナが指差すのは、あのワンピース。

「ちょ…………」

何を口走ってくれるんだ。

ワンピースを見たルトは、「おー」と能天気な声をあげる。

「そうだなぁ...ジェイド、着てみたいって思ってる?買ってやろーか」

「えっ!?」

何故、そうなる!?

必死に、ぶんぶんと首を横に振った。

「いらない、いらない!そこまでしてもらえないよ。そんな、わがまま…」

あわあわと口を動かすと、私の言葉になにか引っかかったのか、ルトは眉を寄せた。

「なんで?」

なんで!?