月夜の翡翠と貴方






翌日の正午。


私達は宿から出ると、約束の時間にラサバに教えてもらった友人宅へと向かった。

出てきたふたりは、既に用意を済ませていた。


「では、よろしくお願いします」


深々と、こちらへ頭を下げてくるラサバ。

それを真似たように、スジュナも可愛らしくお辞儀した。

「よろしくお願いします」

桃色のワンピースの裾を持ち、足を組んで、礼儀良く。


その様を微笑ましく見つめながら、私も「よろしくお願いします」と真似た。

笑い合う私とスジュナを、ラサバは目を細めて見つめていた。

やがて「それでは」と言い、彼は劇場のほうへと足を向ける。

姿が見えなくなるまでバイバイと手を振る娘に、笑って振り返していた。


完全にラサバの背中が見えなくなったところで、私達は顔を見合わせ、歩き始めた。

突然、ルトが「あのさ」と声を出したのは、分かれ道にさしかかったところだった。

「俺、手紙を出しに郵便商に行きたいんだよ。けど、それが結構遠くてさ」


彼は進もうとしていた道ではない、もうひとつの道を指差していた。

その手に持っているのは、昨日の夜に見た封筒である。