月夜の翡翠と貴方



安心した私は、気になっていたことを訊いてみた。


「……本当に、知らないの?劇場にいた人達」


スジュナはパンをかじりながら、なんとなしに答える。

「うん。知らない」

…どういう、ことなのだろうか?

「おとといまでお家にいたのは、スジュナとパパだけだもん」

「一昨日?」

「うん。昨日は、スジュナだけパパのお友達のお家に泊まってたから。多分昨日、あの人達が来たんだよ」

あの人達、とは、きっと劇団の人間だ。

訳がわからなくなってきた。

家が劇場である以上、劇場の娘が劇団の人間と知り合わないわけがない。

スジュナ自身も、あまりよくわかっていないようだった。


「………誰なのかなぁ……」


そうぽつりとつぶやき、スジュナはパンをかじる。

そこで、ずっと会話を聞いていたルトが、口を開いた。


「………母親は?」


…私も、気になっていたことだ。

スジュナは、おとといまで家に住んでいたのは、自分と父親だけだと言った。

しかし、訊いて良いものなのかわからず、躊躇っていたのだが…

スジュナは少しだけ目を伏せ、スカートのポケットから、一枚の写真を取り出した。