月夜の翡翠と貴方


ルトを見ると、突然の頼みごとに戸惑っているようだった。


「お願いします!どうか………」


男の声は、どうか、どうかと、必死さが伝わってくる。

ルトは半ば男の勢いに飲まれるように、返事をした。


「あ…え、えと………ハイ」


…あぁ。

きっと、これがこの男の性分なのだろうな、と思った。

必死に頼まれたら、断れない。

お人好しというやつだ。


ルトの言葉に、男が頭をあげ、ぱぁっと顔を明るくした。

「ありがとうございます……!!お礼はまたきちんと致しますので!私はこれで…!スジュナをよろしくお願いします!では……」

そんな早口もほどほどに、バタン、と扉は閉められた。

あっという間である。

扉の向こうから、バタバタと音がした。

…状況に、あまりついていけない。

とにかく、スジュナの面倒を見ていればいいのだろうが……

残されたスジュナは、扉の向こうを見つめている。

「パパ…………………」

沈んだ碧眼は、寂しそうに揺れていた。