月夜の翡翠と貴方



「……? だれ?今の声……」


スジュナが首を傾げると、男は慌てたように説明を始めた。


「あ……ぱ、パパの知り合いだよ。用事があって来てるんだ」


…彼は、明らかに無理をして笑顔を作っている。

おかしい。

この子の父親が彼なら、同じ劇団らしき女を知り合い、なんて言わないはずだ。

どういうことなのだろう。


「…お家のなかには、入れないの?」


スジュナが、眉を下げて扉を見つめている。

男は冷や汗をかいたように、激しく焦りうろたえ始めた。

「それは…あ…ど、どうしよう………」

泳ぎ回るその目が、ぱちりと私とルトに止まった。

「あっ………あの………!」

そして彼は、必死な様子で話しかけて来た。

「ご迷惑を承知で頼みます!この公演の時間だけでいいので、スジュナを見ていてはいただけませんか………!?」

「…え」

「公演が終わる頃に噴水公園にいてくだされば、向かいにいきます!事情は後ほど説明致しますので……お願いします!」

深々と、頭を下げてくる男。

どうなっているのか、さっぱりわからない。