20時過ぎ――
私は余り仕事をする気分でもなく、早々に片付けを済ませて帰宅する事にした。
そんなに急ぐ仕事も無いし、ユーザーからの問い合わせメールも18時以降は返信しない事になっている。
私はエレベーターで1階まで下りると、通用口から外に出た。
ユーザーからの問い合わせメールは意外にも多く、1日20件以上届く。
初歩的な質問から、誹謗中傷的な通報まで内容は様々だ。
ユーザーは常に様々な事を考えながら執筆し、その作品を読んでいるんだ。
たかが問い合わせだと思わずに、その声に真剣に対応しなければ新規のユーザーも増えないし、既存ユーザーの維持もままならない。
私は受信したメールを見て、そう強く感じた。
オフィス街の外れまで着くと、駅とは違う方向という事もあり既に人通りは少なかった。
薄暗い歩道の先に、いつものコンビニが見え始めた。
この時私は、ミユキやアリスの事があり、信号待ちで背後に気を配る事をすっかり忘れていた――
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