玄関の右側にある車庫に、白い乗用車が停まっている。
家族は自宅にいる事は間違いないが、たかだかケータイ小説サイトの人間が、いきなり訪問しても良いのだろうか?
いや、折角ここまで来たんだ。それに、アリスだけの問題ではないかも知れないし…
私は意を決し、門に付いていたチャイムを鳴らした。
旧式のベルが、濁った音を家内に響かせた。
門の外で待っていると玄関で物音がし、扉が開いた。
沈みきった表情の40代半ば位と思われる女性は、私の方に視線を向けて言った。
「どちら様ですか?」
「私、ケータイ小説サイトの吉川と申します…」
追い返されても仕方がない。こんな時にケータイ小説だなんて、場違いも甚だしい…
私はそう思っていたが、意外にも中に招き入れられた。
「ケータイ小説の…
どうぞこちらに」
私は門を抜けると、言われるまま玄関に向かった。
そして、扉が開け放された玄関に入ると、そこには線香の何とも表現し難い悲しい香りが漂っていた…
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