「それが…

由衣の後ろに帽子を被った人が立っていて、背中を突き飛ばしたって…
それで由衣が自分から車道に飛び出して来たと――」


帽子を被った人?


「…――状況を考えると、確かに由衣が車道に出たかも知れないけど、自分の不注意を棚に上げて飛び出して来たなんて…

そんな言い分、有り得ません!!」

由妃は今でも思い出すと怒りが込み上げてくるのか、興奮して手が小刻みに震えていた…


しかし私はその由妃の表情を見つめながら、由妃とは全く逆の事を考えていた。


多分、その運転手が言っている事は本当だ。

唯だけならまだしも、全く同じ様な状況でスタッフの3人が交通事故に遭っている…
しかも、全員が横断歩道で信号待ちをしている時に――



「あ、あの…
私はそろそろ行っても良いですか?
ちょっと用事があるので…」

「あ、ごめんなさい…どうもありがとう」


由妃は頭を下げると、小走りで駅の方に消えていった。


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