確か参加者は、本名と住所があった筈だ。
資料を捲っていくと、一番最後に参加者の名簿が付いていた。
唯の自宅は、神奈川県になっていた。電車で片道1時間もあれば、十分に行ける場所だった。
私は翌日の土曜日に、唯の自宅に行く事に決めた。
でもその前に、仕事を片付けてしまわないと…
その時――
「くそ!!
どうなってるんだミユキは!!」
右斜め向かいで、小野寺さんが激しく受話器を投げ付けた。
見るからに苛ついている様子で、皆が目を合わせない様にしている。
どうやら、未だにミユキに連絡が取れないらしい…
新人賞作品をの籍化を発表しておきながら、もし出来なかったらサイトの信用が失墜する。
小野寺さんも、かなり厳しい状況に追い込まれている様だ。
それにしても不思議だ。あれ程書籍化を喜んでいた人が、いざ本の打ち合わせをする時になって、突然音信不通だなんて…
「吉川君、何か用事があるのか?」
「い、いえ…」
危ない危ない…
とばっちりを受ける所だった。
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