「おい吉川君。
特集の紹介文、もう完成しているんだろうな?

持って来てくれ」


9時15分――

森田課長が私に、作成を頼んでいた特集の紹介文を提出する様に指示をした。

私は自分のデスクの左端に置いていた茶色の封筒を手にし、ゆっくりと立ち上がった。


この時の私は、無意識に笑っていたかも知れない…



「誰だ、私の机にカッターナイフを置いて行ったのは?」

「森田課長、これです。読んでみてください…」

「あ、ああ…分かった」


私は森田課長に茶色の封筒を渡すと、自分の席に戻った。



あの時…
田中は言った。


「犠牲の無い正義はあるのか?」


違う――


正義など最初から無いんだ…



「も、森田課長!!」

「いやあぁぁ――!!」

「119番ですか!?
救急車をお願いします…
カッターナイフで、カッターナイフで、喉を突き刺しました!!」


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