私は鍵もかかっていない無用心な扉を、ゆっくりと開けた。
そこは狭い縦長の窓も無い部屋で、片側に棚が設置されていて、人1人がようやく通れるスペースがあるだけだった。
中に入り鉄枠だけの簡素な棚を見ると、今まで販売したケータイ小説の書籍とCD-ROMが、3段に分けられ乱雑に置かれていた。
「整理すれば良いのに…」
私はその無造作に積み重ねられたCD-ROMの中から、去年の大賞データを探し始めた。
とりあえず見出しは付けられているらしく、1枚ずつ見ていけば簡単に見付かりそうな感じに思えた。
しかし、意外とCD-ROMの枚数が多く、なかなか見付からなかった。
「もう、何で無いのよ!!」
狭い室内にも苛つき、つい短気に手を払った。
「あ…」
棚に積み上げられていたCD-ROMやフロッピーの山が崩れ、床に散らばった。
余計な仕事を増やしてしまった…
その場にしゃがみ、散乱した物を拾おうとした、その時――
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