その時だった――


「吉川君」

私の名前を呼ぶ声がして、私は現実の仕事に引き戻された。

「は、はい!!」

返事をして周囲を見回すと、森田課長と目が合った。

どうやら私の名前を呼んだのは、森田課長の様だ…

私は立ち上がると、課長席まで急いで行った。


「な、何でしょうか?」

一瞬、仕事もせずに犯人探しをしていた事がバレたのかと焦ったが、要件はもっと厳しい事だった。


「吉川君、次のピックアップ作品の紹介文を依頼したいのだが、大丈夫かな?」

「次のピックアップ作品…
大丈夫ですが、どの作品の紹介文を書けば良いのでしょうか?」


森田課長の眉間にシワができ、強い口調に変わった。

「今朝の会議を聞いていたのか?
次のピックアップ作品は、今年の大賞関連の作品に決まっているだろ。

順番は任せるが、大賞の締め切り1ヶ月前までには、全てピックアップするんだ。

分かったな!!」


.