「あの時…ですか?」

「そう…
第1回の時は、不正なんて無かったのよ。
それでも、ケータイ小説もちょうど追い風だったし、大賞作品は30万部以上売れたの。

でも…
その後勢いに乗って発売した優秀賞作品が、初版で10万部刷っていたのに、販売数が2万部。

それからよ。
森田課長が最初から売れる本を選んで、売る為にあれこれと工作をする様になったのは…

噂では、次期編集長の座を同期と争ってるらしく、もう失敗は許されないとか…」

「出世の道具って事ですか…
その方針に、誰も疑問を抱かなかったんですか?」


私がかなり不機嫌な表情をしていたのか、その女性スタッフはすぐにフォローを入れてきた。

「馬鹿ね、今でも誰一人納得なんてしてないわよ。

でも、全面的に反対した瀬戸川さんの状況を見れば、誰も反対できないわよ…」

「瀬戸川さんって…
私の前任者のですか?」

「そうよ」


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