私は構わずポケットに忍ばせていたあの紙を取り出し、瀬戸川さん見せた。
「私が後を引き継いで、瀬戸川さんのしていた仕事をしています。
ある経路で入手したのですが、これは本物ですか?」
すると、瀬戸川さんは不意に工房の方に振り返り、奥にいた男性に声を掛けた。
「すいません、前の会社の人が訪ねて来たので、10分程空けます」
瀬戸川さんは、私を連れて店の外に出た。そして、私の顔を真剣に見据えた。
「それは本物です…」
「本物…なんですか?」
思わず見詰め返す私に、瀬戸川さんは話を続けた。
「私があの出版社を辞める原因になったのが、新人賞なんです。
主催者として本来あるべき公正で中立な立場を無視し、開催する前に自分達で受賞者を決めるなんて…
確かに、本が売れないと会社は困ります。それは分かるけど、やはりユーザーを裏切る様な行為は、私には出来なかったんです…」
「そ、そんな事が…」
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