表通りから一本入った、交通量の少ない静かな場所…
クリーム色のひさしは布製で、木目調の外観が柔らかく感じる店舗は、知らなければとてもパン屋には見えなかった。
私は早速入口の扉を開けて、店内に入った。
「いらっしゃいませ」
店内は意外と広く、8畳程の売り場には色々なパンが並び、レジの奥にはパン工房が見えた。
見たところ、従業員は男性が1人と女性が3人…
私はレジに立っていた女性に話し掛けた。
「あの…
瀬戸川さんが、こちらで働いていると聞いてきたんですけど…」
女性は一瞬怪訝そうな表情をしたが、すぐに奥にいた白い調理用の帽子を被った、クリーム色の制服を着た女性を呼んだ。
奥から出てきた女性は、きょとんとした表情で私を見た。
「え―と…
どちら様ですか?」
「あ、私はムーン出版の吉川と申します。少しお話が聞きたくて…」
出版社の名前を出した途端に、瀬戸川さんが眉をひそめた。
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