黒猫*溺愛シンドローム~Plus~





「こ…こんな格好じゃ、行けないよぉ。」



“お兄ちゃん”の手を振り払って、その場にしゃがみ込んでしまったお姫様。


こんな格好って…その長いスカート?

確かに時代遅れって言うか、目立つけど…


や…違うか。
この格好でここまで来たんだもんね。



「萌は“変”だから。」


「…え?」


「みんな、萌を見るとひそひそ言うの。笑うの。だから…」



パッと顔を上げて、
王子が持つ、メガネとマスクに手を伸ばした。



「それ、返して?」



……ん?



「それがないと、萌はダメなの。お顔が見えたら、みんなの迷惑なの。萌が変だから、みんな…」



この子って……



「萌…」



はぁーっと、大きなため息をついてから、

妹と同じ目線にしゃがみ込むと、王子は子供をなだめるように言った。



「それは違うよ?」


「……」


「昨日も言ったけど、
みんなが萌を見るのは、萌が“変だから”とかじゃなくて…」



昨日、って…

寝不足の原因はこれか?


なんか、わかったような気がする…



「萌が“可愛い”からなんだよ?」