「だ…だからっ…」
触れそうで触れない、ギリギリのところで追い詰める。
あーっ。もうっ。
ここが教室じゃなかったら、今すぐくっつけちゃうんだけどなぁ…
とまらなくなるから、やめておこう。
「一緒に帰…」
そこまで言って口ごもる彼女。
「ん?“一緒に”何?」
わざとらしく聞き返す俺。
「だからぁ、帰りたいの!寄るところがあるの!」
ついに爆発したのか、顔を真っ赤にして彼女は声を上げた。
ぶっ…
「はいはい、わかった。よくできました。…帰ろ?」
にっこり微笑みかけて、頭をひと撫でして。
その小さな掌を掴んで、俺は立ち上がった。
「ちょっ…」
そして、そのまま。
鞄を持って、さっさと教室を後にする。
「…あ、あゆちゃん風歩ちゃん、バイバーイ!また明日ねぇっ」
俺たちに気づいたくるみちゃんの、陽気な声を聞きながら……
「……で、どこに寄って帰るの?」

