黒猫*溺愛シンドローム~Plus~



――放課後。


帰り支度をする俺の前にできた影。



「帰るん…だよね?」



少しだけ遠慮がちに。

でも、強気な姿勢は崩さないまま。

俺に言葉を投げ掛ける。



「ねぇってば!聞いてる?」



返事もしないし、顔を上げない。

そんな俺にしびれを切らしたのか、机を叩いて、身を近づけてくる彼女。


……ふっ。


見なくてもわかる。

絶対にまた、可愛い顔で怒ってるんだろうなぁ。



「すぐ帰るんでしょ?今日は何もない日だって…って、ちょっと!何…」



目の前にあった細い腕を掴んで引き寄せて。



「帰るけど…何?」



至近距離に捉えて、彼女の顔を覗き込んだ。



「……っ」


「風歩ちゃん?」



じーっと見つめれば、カァーッと頬を赤くして瞳をそらそうとする。

それを遮るように、さらに引き寄せて瞳を覗けば…



「ちょっ…やっ…」



可愛い反応。

何が言いたいのかなんて、最初からわかってるけど…


つい、からかいたくなっちゃうんだよねぇ。



「はっきり言ってくれないとわかんないよ?」