「ちょっ…」
背後から覆い被さるように私を囲い込んで、鍵盤に手を伸ばす王子様。
そのまま、さっき私が弾いた一節を弾き直した。
「ね?」
確かに、少し指の動きを変えただけで滑らかな響きになった。
それはいいんだけど…
「…っ!」
ち…近い。
顔も体も近すぎる。
ピアノって、こんなに密着するものだったっけ?
かぁ~っと、顔が熱くなって、思わず俯いてしまった。
「風歩ちゃん?」
そんな私を不思議そうな瞳が覗き込んでくる。
べ…別にね、今さら照れるようなものじゃないよ?
つき合ってからだいぶ経つし、いろいろしてるし、近いのもくっつくのも慣れたよ。
でもさ…
ホントに久しぶりと言うか予定外と言うか…
今近づかれると、コントロールできない。
そんなふうに見つめられたら、私は…
「……て欲しい。」
「え?」
「さっきの…何でもしてくれるんでしょ?」
「ああ…」
こんな言葉、自分の口から出る日が来るなんて思わなかった。
くるみじゃあるまいし…
でも、なんかもうダメだ。
「キスして欲しい。」

