「ちょっとは弾けるでしょ?」
拒否する私をおかまいなしに、無理矢理椅子に座らせる王子。
「やっ、ホントに無理だから…」
「『猫踏んじゃった』とかでいいから。…いや、むしろ風歩ちゃんの『猫踏んじゃった』が聞きたい」
「はぁ?」
馬鹿にしてんの?
「私だって、これくらい弾けるから!」
なんでだろう?
なんとなくカチンときて、私は鍵盤に向かってしまった。
今でも唯一弾ける…と言うか、覚えてる曲。
最初で最後の発表会で弾いた、初歩中の初歩の曲。
あんなに素晴らしい演奏の後で弾くようなものじゃないんだけど…
「わぁ、上手上手。」
なんとか弾き終えた私を、大袈裟な拍手が迎える。
なんかムカつくんですけど。
キッと睨み付けて、さっさとピアノから離れようとしたのに…
「でも、ここをこうすれば、もっと良くなるよ」

