「長いこと弾いてないから自信はないけど…うん、わかった。」
少しだけ戸惑いを見せたものの、
「ちょっと待ってて。一応、楽譜用意するから。」
そっと私から離れて、ピアノのほうへと向かう王子。
え?と言うことは…
「ピアノ、弾けるの??」
…いけない。驚きすぎて叫んでしまった。
あ、防音だっけね。
「ん?…ああ。小さい頃から、母親に教えてもらってたからね。」
難しいのは無理だけど…なんて、謙遜しつつ、ピアノの側にある棚から楽譜を取り出す王子様。
勉強はできるわ、スポーツ万能だわ、料理もできるわ?
加えてピアノまで弾ける、だなんて…
何から何まで出来すぎでしょ?
コイツにできないことなんてないんじゃないの?
他にはなんだ?
乗馬とか日本舞踊とか、弓·槍·剣道とか…言わないよね?
……聞かないでおこう。
「よし、じゃあ弾くね。」
私があれこれ妄想してるうちに、準備が整ったらしい。
手招きして、私をピアノのほうへと呼び寄せると、
「あんまり期待しないでね」
そう言って、王子は鍵盤に指を滑らせた。

