「ここ、服屋さん?」
たどり着いたお店は、たくさんのマネキンが印象的な、どう見ても服屋さんだった。
「何着か、好きな服を選べばいい。それしか持っていないんだろう?」
それ、と言いながら、今あたしが着ている服を指差す。
春物のニットに、パステルカラーのスカート。登校途中だったから、もちろん替えの服なんて持っていないし、強いて言うならランドセルに押し込んだ体操服ぐらいだ。
「あ、もしかして……少し出費するって言ってたのって、これのこと?」
この街に着いたばかりの時に、ウィルが言っていたのを思い出す。
ーーあたしの物買うための出費なら、なんだか悪いな……。ないと困るものだけど……。
「必要なものだ。気にしなくていい。……それに、しばらくは一緒に過ごすことになるんだからな。あんたにも働いてもらうことになるだろう。あんたはただ庇護されているわけじゃない」
あたしの頭をぽんぽんと撫でて、微笑みかけてくれる。
ーーそっか。これから頑張って、みんなと一緒に頑張れるようになればいいんだ。その為には、まず色々そろえておかなくちゃね。
「あたし、まだ具体的に何を頑張ればいいのか分からないけど、とにかく何でも頑張るね!買ってもらったもの、無駄にはしないわ」
「頼もしいな」
ふっと笑って、また頭を撫でてくれる。
「女物の服は俺には分からないからな。自分で選ぶといい。金銭的に無理なものは、その都度言う」
「うん!」
あたしはざっと辺りを見渡した。