――落ちる。

 なにがなんだかわからないけど、とにかく落ちる。

「ひゃああぁぁああ――ぐぇっ」

 背中から落ちて、ランドセルがクッションになったらしい。
 一度軽く跳ねて、地面に着地した。

「び……っくり……した……」

 呆然と辺りを見てみると、これはまずいと、脳内で警告音がなる。

 ――青い空、若葉の生い茂る草原、横断歩道から落ちて、引っ繰り返ってるあたし……。

「ここ……どこ……?!」

 がばっと体を起こして、上を見上げてみる――けれど、横断歩道はどこにも見当たらない。

 ――え、どこから落ちたの……?

 きょろきょろと辺りを見回していると、ふと暗くなった。

 雲でも出てきたのかと上を向くと――茶色の目があった。

「うわっ」

 驚いてあとずさると、その子はあきれ顔で肩をすくめていた。