あたしは美味しくない!!



「おかえーーうわっ!」

 振り返って、思わず後ろに飛び退いてしまう。

「まだ俺のこと怖いのかよ」

 不機嫌そうに言うカインは人の姿で、怖くはない。

「か、カインじゃなくて!」

 怖いのは、カインが片手で掲げているものだ。

 ーー目が怖い……。

 カインは、鶏ぐらいの大きさの鳥の両足を掴んで掲げているーーその鳥の見開いた目が怖い……。

「……その鳥が怖いんだろう」

「あ?だって、鳥を食うって言ったのミカだぞ?」

「い、言ったけど!あたしがいつも食べてる鳥は頭も羽も足もなかったもん!」

「頭も羽も足もねぇ鳥って、どんな鳥だよ」

 ーーいや、そうなんたけど!あたしが知ってる鳥は鶏肉で……や、でも鶏肉は鳥だから鳥で……あれれ?

 頭を抱えて考え込む。鳥を食べるとは言ったけど、こんな姿の鳥は食べられないし……。

「……落ち着け」

「カインはそのまま食べるでしょうけど、彼女はさばかないと食べられませんよ」

「さばくって、じゃあ丸ごと食わないのかよ」

「食べないよ!」

 ーーじゃ、じゃあ、カインは丸ごと食べるんだ……。