あたしは美味しくない!!



「きゃあぁぁあ!」

 抱えていた薪は全部落としてしまって、腰を抜かしたまま、ずるずると後ずさる。
 透明な身体は私の背丈の半分ぐらいあって、拳だいのギョロ目は身体がブヨブヨと揺れる度にアチコチを向いていた。

 ーー真っ黒……。

 なによりも、身体のほとんどまで広がる口は歯こそ見あたらないものの、真っ黒で、大きな穴のようだった。

 ギョロリ、と目玉があたしを睨んだ。
 大きな口が、目一杯開かれる。

 ーー食べられる!!

 目をつむって、両腕で頭をかばった。
 食べられるような衝撃は来なくて、代わりにベチャッと潰れるような音がした。

「ミカ!」

 ーーダネルの声だ!
 声にほっとして目を開けると、目の前で、ブヨブヨが枝に串刺しにされていた。

「ひゃっ……!」

 驚いてさらに後ずさると、走ってきたダネルに背中がぶつかる。