「……ごめんなさい」

「いいよ、別に」

「その、今もだけど……さっき喰われるとか喰われないとか話したとき、野犬に食べられるって言っちゃったから、それもごめんなさい。あの時も、カイン嫌だったみたいだし……」

 頭を下げて、ちらりとカインを見ると、鋭く尖った犬歯が見えた。
 びくっとしたけど、カインは大きく口を開けて笑っていた。

「ははは!そんなこと気にしてたのかよ。ミカって変なやつだな」

「へ、変ってなによ!人が謝ってるのに!」

「ははは、それより俺、狼だから野犬じゃねぇし」

「はわわ……ごめん!」

 ――あーもぅ、あたしったら!また気に障るようなこと言っちゃった……。


「……カインは、怒ってないぞ」

「え、ほんと?」

「ああ、怒ってねぇよ。でっかい鳥か魚採ってきてやるから、待ってろよ」

 そう言うと、にやりと笑って、風のような早さで走っていった。