「ちーこーくーだー!!」

 誰もいない大通りをひたすら走る。
 足を踏み出すたびにバンバンと、背中にランドセルがあたって痛い。

 ――そう、あたしは小学生の女の子。

 ――ただいま遅刻ぎりぎりです……。

「誰もいないよー……」

 ひとたび登校ラッシュをすぎてしまえば、人はほとんど見かけなくなる。

 ――心細いよー……。

 家を出るときまでかぶっていた黄色い帽子も、今は首にゴムがかかっているだけで、ランドセルの上に脱げていた。

 息も絶え絶えになって、校門を目前に立ち止まる。

 ――横断歩道……。

 校門の前に並ぶ白と黒のしまもよう。

 この横断歩道を渡らなければ学校には入れない。が……

 ――この横断歩道には、嫌なうわさがあるのよね……。