電車の音で目覚めた。
いとしい人の穏やかな寝顔が視界をしめていて、こそばゆい気持ちになる。

昨晩から付けっぱなしのテレビは、朝のニュース番組を写していた。
今日のメインニュースは一昨日起こった事故について。
数多くでた被害者の一人、桂木ユウキさん。
葬儀は、今日執り行われるらしい。

悲惨なニュースから逃げるように目を瞑る。
すべてが現実味を帯びていなかった。


彼の頬にそっと唇を落としてから、体を起こす。
安い作りのベッドは、すぐにぎしりと声を上げる。

いつも隣に眠る彼を起こさないように細心の注意を払わなければいけない。
けれども、今日のベッドはやけにおとなしかった。
私の気持ちを代弁するかのように、静まり返った部屋の中。

私は彼を起こすことなく床に降り立つことができた。


そろそろと部屋をでて、ベランダへ。
朝ならではの涼しい風が汗ばんだ顔を撫でて、ようやく思考が本格的に働き始めたようだ。