「あっ、お金……」
「いいよ。ここは男の俺に奢らせて」
「でもっ……」
ファミレスを出て、財布を出そうとした桃香ちゃん。
「いいから。無理やり俺が連れ出したようなものだし」
さすがに、ここで払わせるなんて男じゃないだろ。
「でも……あれって美樹のために提案してくれたんでしょ?」
美樹ちゃんの為……か。
「ん―……ていうより、信二の為を思ってかな?」
「え?信二君の為?」
「そっ、あいつが恋愛をするように」
そう言った俺の言葉に、不思議そうに顔を傾けた。
あいつは変なところで俺に遠慮する。
自分だけが幸せになれない、って……
ほんと、変なダチだよな。
そんなこと考えずに、自分の幸せだけ考えればいいのによ。
「それって……」
「まだ時間ある?」
「え?」
「まだ時間あるなら、どこか行こうか?」
「あっ……」
桃香ちゃんの言葉を遮るように、そう言った。



