あの時……
篤志に部屋に連れ込まれた時、助けにきてくれた悠君。
ケガをさせただけじゃなくて、悠君にそんな迷惑をかけていたなんてっ……
あたし……何も知らないで、ずっと悠君のそばにいたの……?
何も、知らないで……
「今度改めて就任パーティーがあるけど、前ほど悠君は期待はされてないでしょうね。突然中止なんてしたんだから」
「……」
もう、何も言えなかった……
あたし、最低だ―……
あたしが助けを求めたせいで、悠君はここの呉服店の4代目としての信頼を無くした。
「このまま行けば、きっと悠君は立派な4代目になるわ。ご贔屓[ひいき]にして貰っている人からの信頼もすぐに取り戻せると思う」
「……」
「でも、それにあなたは必要ない」
「っ……」
「今のあなたじゃ、悠君の足手まといにしかならない」
それだけ言い残して、由佳さんはあたしを避け、出て行った。
――『今のあなたじゃ、悠君の足手まといにしかならない』
本当は気付いていたことだった。



