「彼氏との今を考えるより、未来を考えなさい」
「……未来?」
「そうだ。これからも一緒にいたいと思うなら、まずはちゃんとお互いが自立しないといけない」
「だけどっ、それじゃ離れ離れになって……」
「離れ離れになったら、ダメになるような付き合いなのか……?」
「っ……」
ここで『違うっ!!』ってはっきり言えれば言いのに、あたしは言えなかった。
だって、少なからずあたしの心には『離れたらダメになる』って言う想いが、見え隠れしているから……
「それでダメだったらダメな時だ」
「っ……」
「彼氏にはちゃんと将来の夢とかあるんだろ?」
「……うん」
紺野呉服店の4代目になるという、ちゃんとした夢が。
「だったら、今のお前がその彼氏と居ても、邪魔になるだけだ」
「っ!!」
「あなた、それは言いすぎなんじゃ……」
はっきりと言われた一言に、胸がギュッと苦しくなる。
「桃香、よく考えなさい。お前が彼のそばにいて、今のお前に何がしてやれる……?」
今のあたしに……何がしてあげられるのか……?
……あたし、何もしてあげられない。
着物のことも、呉服店のことも……
何も分かってあげられてないのに、そんなあたしがそばに居ても……



