「綺麗だと思わない?今夜の月は」
「月……?」
そう言われて、そっと空を見上げる。
「……綺麗―……」
素直に口を開いて出てきた言葉。
胸がジーンと熱くなった気がした。
まんまるに輝く月。
これこそ満月といった感じだ……
こんなに綺麗な月に気づかなかったなんて……
「あっ、ほら。また下を向く」
「えっ……」
「下ばっかり見てたら、こんな綺麗な満月だって見れないよ」
下ばっかり……
確かに下ばっかり見ていたあたしには、このことに気づかなかった……
「こっちにおいでよ。一緒に月見でもしよう」
どこの誰だかもわからない誘いに、あたしは不思議なくらい、すんなりと従った。
「隣座る?」
「うん……」



