キミが望むのなら



時間は10時。


深夜だと思ってた……


「……はぁ―……帰ろう」


小さな声でそう言って、ベットの近くに散らばっている服を身につけていく。



カバンを持ち、もう一度だけ篤志を見て、部屋を後にした。



外は月明かりに照らされて、そんなに暗く感じない。


でもこんな時間だ……


人なんて全くいなくて、シーンとしていた。


夏なのに、今日の外の空気は少しひんやりしていて、何故か心に沁みる。



ふっ、と住宅街の道路わきにある公園に目が行った。



自然と足が動き、気づいたら公園の中にまで入ってしまっていた。


懐かしい遊具に、少し心が躍る。


「――綺麗だな」


へっ!?


かすかに後ろから聞こえた声に、肩ががビクッと動いた。



バッと振り向くと、砂場の近くにあるベンチに座って空を見上げる男の人がいた。



少しは離れているところいるあたしには、彼の表情や顔は分からない。