ふと、拾ってきた時、部屋のドアの前で立ち尽くしたことを思い出した。


「どうした?」

「ドアが開かなくて」

「自動ドアじゃねえんだ開くわけねぇだろ」

鍵を渡して部屋を好きなように使えと自分の部屋に入ろうとしたら、シャツの裾を引かれた。

「これは何ですか?」と、小首を傾げた。

「部屋の鍵だ。無くさねえようにしろ」

「………」

「どうした?」


鍵をじっとみつめ、それから俺に両手を差し出して返した。

「いらねえのか?」

こくん。少女が頷いた。


「襲うぞ」

「襲う?」


通じないらしい。
危機感はゼロだった。

諦めて鍵をポケットに入れた。


風呂に入れと言った時も、脱衣場で脱ぐでもなく、裸で部屋から出てきた時は度肝を抜かした。


ましてや、そんな常識が通じねえ女に料理なんて作れるはずもねぇ。




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