「‥風邪、引きますよ‥?」


正直先生の柔らかくて低い声が‥私の冷えている体の芯の部分に心地よく響く。


「‥わかってるわよ、そんなこと。」


相変わらず可愛くない私。


「‥これ、使ってください。」


正直先生は何も聞かずに、差し出した傘を受け取ろうとしない私の手をそっと取って、傘を持たせてくれた。


「‥じゃあ、また明日。」


優しく微笑んで、正直先生は雨の中を走って行ってしまった。


残された私は‥傘の柄をギュッと握って、傘に弾かれる雨の音を一人で聞いていた。