鬱女と天然男

次の休み時間。どうやら斎藤くんはクラス皆に挨拶しているようだ。
あの調子だと私にも挨拶にきそうだ…。
逃げるが勝ち。逃げよう
あいつとは関わりたくない。

あり得ない話だが万が一、いや億が一かもしれないがあいつと私が仲良くなってみろ…
あいつ狙いの女子には目の敵にされる。
あいつ顔はいいらしい。私は顔なんてどうでもいいがな
ま、とりあえず廊下に…

「あ!待ってー!」

げっ……
この声は斎藤くんですか…
き、聞こえない聞こえない。
さ、自動販売機でナタデココ茶買い行こう。

「ちょっと待ってよ!」

ナタデココ茶はマイナーかつ味がとても微妙だ
まあその微妙さが私は好きなのだがな。
ジュースならまだしもナタデココ茶って、茶って…

笑を堪えていると後ろから腕を掴まれる。

「ねぇ、聞いてる?」

ごめんなさい。聞いてませんでした。
つかしつこっ…
諦めろよ…

「ごめんなさい。聞こえなくて」

「なんだー、無視されたのかと思ったわー。よかった!」

斎藤くんの笑顔が眩しいんだが。
そんな純粋な笑顔で私を見るな…!

「俺斎藤和也って言います」

相変わらず斎藤くんはニコニコニコニコ。
何がそんなに楽しいんだか。

「斎藤くんね。よろしく」

「うーん、なんか硬いなぁ…。他の子みたいにかずくんって呼んでほしいな!」

「は?」

いやいやいや、かずくんって。かずくんってなんだ。
まだそんな親しくないし親しくなるつもりもないんだが
なにが「かずくん♡」だよ…う、吐き気が

「だめか?」

「いや…まだ…ほらあんまり喋ったことないのにそれはキツイ…じゃなくて恥ずかしいなぁ」

「じゃあこれからもっと喋ろう!」

うわ、めんどくさ!
こいつめんどくさ!
だから天然は嫌いなんだよ!!

「かずくぅ~ん♡、こんな子ほっといてあっち行こ?」

あ、ハートマークつけるやつ本当にいた。

「え、でも…」

「いえいえ私のことは気にせず行ってきてください」

そう言って私は一階の自動販売機に走って向かった。
ナイス、名も知らない女子