「桐谷さんって暗いよね」
「今時ひとつ結びで黒縁眼鏡…ダッサー」
「ほんと、あれ絶対鬱っぽいよね」

なんて部屋の隅で面と向かっていう勇気のない女子がヒソヒソ言っちゃってる。
まあ確かにダサいのは認めるが本人の好きな格好してなにが悪い。
お前らみたいな髪染めて巻いてスカート短くして…校則違反の塊じゃないか。

「はーい、出席とるぞー」

担任の声でやっとあいつらが席につく。
毎日毎日よく飽きないものだな。
まあ私は痛くも痒くもない。
慣れてる…。

「上杉ー」

「はい」

「遠藤ー」

「はーい」

「桐谷ー、…桐谷夏樹ー。なんだ休みかぁ?」

…あ、やば。
出席とってんの忘れてた…。

「は、はい…」

遅れて返事をするとまた隅から「早くしろよノロマ」
と聞こえた。
…大丈夫、慣れてる。