「かわいい春乃ちゃんに免じて
 一つ情報を。」

ごほんと、軽く咳払いをして、
ガタンと席を立ってスーツをきゅっと整える。


「本日、旦那様は大変 朝から機嫌が悪く、
 仕事の要領も悪いように見られます。
 休憩中も、どうやらうわの空で、奥様を気になさっているようでしたよ?」

リュートは、口の端を軽く上げるだけの微笑をして
春乃に深く頭を下げた。
そして、頭をゆっくりあげると、
驚いたような春乃をみて、
あはははと 楽しげに笑った。


「え?そんな。
 ---そうなん ですか?」

春乃はなんだか恥ずかしくなって、
顔をぱっと抑える。

「そうそう。
 昨日遅くなったのがいけなかったのか?とかー
 もしかしたら、春乃の体調がわるいのか?とかー

 出勤仕立てで、もう帰ろうとしてたからな~」

「愛されてますね。奥様。」

松本さんがうれしそうに笑ったものだから、春乃はまたうれしくなって
顔が紅くなるのがわかった。


「うれしいです。
 そうですか。
 建志がそんなに、大事に思ってくれてるなら、
 愛人の一人や二人、大きな目で見ないといけませんよねっ」

ーーそうよっ。頑張らなきゃっ。


春乃は小さくガッツポーズをして見せる。