わたしも同じだ。

だけど、、、
でも。

わたしは傍観していた。

洋子のように心のまま素直にとりまきに加わることもせず、
テニス部に入ることもせず、
会話をすることもない。

ただ、神崎が担当する国語の時間に集中した。

15のわたしと、
一浪して留学経た25の神崎。
洋子によると、神崎には結婚の約束をした彼女がいるという。

10の年の差。
結婚という言葉を現実に受け入れられる環境の男と、
まだ社会も知らない、結婚という言葉も飲み込めない、
中学生では、
どうあがいても太刀打ちできない壁がある。

「ねー、佑子は神崎、好きじゃないの?」
放課後、テニス部への勧誘をいまだ諦めない
洋子がわたしに尋ねてきた。
「キライじゃないよ」と、即答する。
「じゃ、テニスやろーよ。受験の息抜きにいいじゃん」
「ごめん、わたし、ずっと帰宅部だし」
「ミーハーなの、きらい?」

ときおり洋子は無意識のうちにわたしの核心に触れるコトがあった。

確かにミーハーにさわぐ仲間に入るのは嫌だった。

神崎にあこがれて、先生、先生と、近づいて、
中学生らしい生徒を演じるのは辛かった。

わたしは、
わたしは、
わたしは。

ちゃんとひとりの女として、神崎の目に映りたかったのだ。

でも、わたしは知っている。
それが無理なことを。

神崎は先生というカテゴリーをまっとうしている。
先生という役を、100%、演じている。

とりまきの女子たちのことを「女」としてみていない。
同僚の女の教師たちのことを「女」として扱っていない。

だから、自分の気持ちにフタをした。
本気だと、自覚すればするほどに、
神崎にこども扱いされることを恐れて、自身の気持ちを否定した。

恋じゃない。
本気じゃない。

女として相手にされない現実に直面したら、
バカを見るのは自分だ。

わたしは知っている。