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「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃーい」
そう言って仕事へ行ったお兄ちゃんを玄関で見送る。
振り返ったリビングは、シーンとしていて。
お母さんはさっき買い物に行ったし……。
家にはあたしだけか……。
「……外、出よ」
静かな家は、昨日の図書室を思い出させて。
たったそれだけでズキンとひどく痛む胸。
できる限り昨日のことを思い出さないようにしていたのに、このままだと、余計なことまで考えてしまいそうで。
あたしはぼそっと呟くと、小さなショルダーバックに財布とケータイだけを入れて、家を出た。

