君色Diary

誰もいない階段で、空くんの胸に、顔をうずめる茉莉花ちゃん。

それに応えるように回された腕は、優しく茉莉花ちゃんを包み込んでいて。

初めて見たときとは違う。

あのときみたいに、飛びついてきた茉莉花ちゃんを受け止めるだけではなくて。

お互いに抱きしめあった二人。

そんな二人の間には、誰も入る隙間なんてなかった。



「……ヤダ……」




自分でも聞こえるか聞こえないかくらいの声。

二人はあたしに気づかなくて。

足が微かに震える。

これ以上見たくない。

見たくないのに……足が動かなくて。



「………っ!!」



そのとき、無言のまま、静かに茉莉花ちゃんの頭をなでた空くん。

それはとても優しくて……あたしのときとは、全然違って。


あたしはキュッと唇をかみ締めると、その場から逃げるように走り出した。