お父さんは食卓につくなり、ムスーっとした顔。

よろしくない空気が流れてしまった……。


ここはびしっと言わなくては!


「ちょっとお父さん、啓ちゃんに失礼でしょ!超KYだよ!」



お父さんはムッとしたが、すぐに「…な、何だ、そのケーワイってのは」とぼやいた。

孝也がすかさず、こっそりと「空気読めないって意味」と教えてあげていた。



ああ、と納得してから、「何をぅ?」と突っかかった。



「お前に恋なんざ、まだまだ早ぇんだよ!」

「うるさいな!お父さんには関係ないでしょ!」



“関係ない”という言葉に、お父さんはカッチーンと来た様子。




こうなりゃ、虎と龍の戦いだ。

頑固の血は、あたしもちゃっかり受け継いでいるらしい。



「お前をそんなふしだらな娘に育てた覚えはない!!」

「あたしだって、そんな事言われる筋合いはないわよ!!」

「こんな細っこくて頼りなさそうな、どこの馬かも分からん男…」

「啓ちゃんのこと悪く言わないで!!」




じ~っと睨み合う両者。

ぴりぴりとした空気を中和したのは、この男だった。



「まぁまぁ、喧嘩はやめて。食べましょう」


「………」

「………」


「ねっ」


啓ちゃんのゆる~い癒し系の笑顔と、肩に優しく置かれた手で、何となくあたし達は意気消沈してしまった。




恐るべし、マシュマロパワー。