あ~よかった。
啓ちゃんが左利きで!
…なんて、
うまい具合にもいかず……。
「こんな包帯ぐるぐる巻きで、何も出来ない~!」
駅の近くの病院で赤く腫れ上がった右手の診察をしてもらった結果、ぎりぎりで骨にもヒビは入っていなかった。
でも打撲で、2日間は安静に、包帯巻き。
治療を終えて、病院を出た頃には、もう4時を回っていた。
カラスが間抜けに鳴き、空を飛ぶ。
あたしは、明らかに凹んでいる啓ちゃんの背中に手を当ててさすった。
「啓ちゃん、大変だったね…。今も痛い?」
「うーん…ちょっとジンジンする」
「でも、骨に異常がなかっただけ良かったよ!ね。だから、元気出して」
「…うん」
注射とか病院の消毒液とかが苦手らしい啓ちゃん。
よく頑張りました。花丸。
電車に乗り込み、空いていた席に腰掛けた。
電車はガタンゴトン気持ちよく揺れ、ちょうどいい温度。
ああ、気持ちがいいな。眠い…。
ついあくびをする。
そしたら、啓ちゃんもつられてあくびをした。
あたしがチラっと横を見ると、啓ちゃんはもう一回あくびした。