「……美園?」

「…へ?」


気がついたら、啓ちゃんがあたしの目の前で手を振っていた。



いっかーん!

また妄想してしまったぁ~!



あたしは一人で悶えて、百面相。

啓ちゃんは不思議そうな顔して首を傾げた。




するとそこへ、スーツ姿の店員さんが笑顔で近づいてきた。



「いらっしゃいませ。お客様、何かお探しですか?」

「あ、えっと」



あたし達が顔を見合わせると、店員さんがきょとんとあたし達を見比べてから言った。



「ご夫婦ですか?」

「ええっ!?」



あたしは思わず顔を真っ赤にして後ずさり。

啓ちゃんもちょっと照れながら、コホンと咳払いをして、「いえ。僕達まだ、高校生なので…」とつぶやいて誤解を解いた。




店員さんは笑いながら、「あっ、そうでしたか!それは、失礼いたしました」と頭を下げた。




あたし達は「いえいえ…」と小さく言いながら、お互い見つめ合って、ふっと笑った。

確かに、寝具売り場なんかにいたら、勘違いするよね…。



でも、店員さん、ナイスです。

ナイス勘違い。



結局その店員さんに本棚のエリアに連れて行ってもらい、おススメなんかを聞いた。




「あ、これがいい」



啓ちゃんが選んだのは、シンプルな白い本棚。


えらいぞ、啓ちゃん。

今回は優柔じゃなかったね。



店員さんに、配送の手続きをしてもらい、お金を払ってその本棚を買った。



書類を書いたりしている時、あたしが「気に入ったのがあって、よかったね」と言うと、啓ちゃんは、「うん!」と嬉しそうに笑った。