目の前にいた男子がアンに気付いて振り向きざまにアンの顔面に向けて肘を放ってきた。


想定の範囲内だったので首を傾けるだけでそれをかわし、男子が体を振った事でできた隙間に自分の体を割り込ませる。


アンは自分に向かって放たれる攻撃を正面から受けはせず、かわすかいなすかして巧みに人の合間を縫ってゆく。


俯瞰から客観的に見れば、それはまるでダンスでもしているように優雅でムダのない動きであった。


全方位で乱闘中の密集したバトルロイヤルの中で、その優雅さはむしろ異様ですらある。


が、アン自身はそうとは知らずいつも鼻高々に舞いを舞っているつもりだった。