雲境(うんきょう)学園。


それは、家からは程遠い場所にある、俺の憧れの高校だった。

中学3年のことだ。

両親に、雲境学園に行きたいと打ち明けたら、
一瞬の沈黙の後、すぐさま凄い形相でたっぷりとお叱りを受けた。

進路指導では、先生にあからさまに面倒そうな顔をされた。

それでも、俺は諦めなかった。

何故なら、絶対に曲げられない約束があったから。


『私を追いかけて下さい、未紅。

あなたなら、立派な学園の……になれるから。

私の意志をついでください。

それは、あなたにしか出来ないことだから』


途切れてはいるが、彼女は確かに言った。

それは俺にしか出来ないことだと。

形は少し変わってしまったけれど、
俺は約束通り、この学園に来たんだ。

「やっと、ここまで来た」

俺は、学園への一歩を踏み出した。